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Criminology Research Center(CrimRC)

犯罪学研究センター

犯罪学カリキュラム構想

創生! ポスト・コロナ時代の新しい時代の犯罪学
〜“つまずき”からの“立ち直り”を支援する
「人に優しい犯罪学」〜
A New Criminology in a Time of Post-COVID19:
“Compassionate Criminology” of Desistance from “Deviance”

【伝統的犯罪学の誕生】

犯罪学(英:Criminology)は、19世紀後半のヨーロッパで誕生した。犯罪現象を科学的に説明し、これに対する合理的な対策を立案し、実施することを目的とする学問である。
その特徴は、実証性と実用性にある。日本では、法学部では刑事学・刑事政策、社会学部では犯罪社会学、心理学部では犯罪心理学、医学部では法医学・司法医学など別個に講じられている。アメリカやヨーロッパの大学ではそれらを統合するものとして「クリミノロジー」あるいは「クリミナル・ジャスティス」と呼ばれる学部が設置されている。日本にはないが、海外には修士や博士の学位を認定する大学院があり、高度職業専門人や研究者を育成している。特筆すべき点は、犯罪学が研究者や専門家だけでなく広く一般市民にも、犯罪や非行、刑事司法に関するリテラシー(基本的知見)を提供していることである。言い換えれば、市民生活のための必須の科学なのである。

【龍谷・犯罪学の基本理念】

龍谷大学 犯罪学研究センターは、犯罪や非行現象を人間科学・社会科学・自然科学の視点から実証的に解明し、犯罪者・非行少年に対する支援を基盤とした合理的な刑事政策を構築するために研究・教育・社会実践の諸活動を行なってきた。わたしたちは、日本の犯罪現象や刑事政策に関する知見を世界に発信し、諸外国の刑事司法にも建設的な提案をすることのできる犯罪学のエキスパートを輩出していきたいと考えている。

【司法の枠を越え、広く地域社会へ】

司法の枠を越え、広く地域社会へ

日本は、犯罪統計上、認知件数や刑務所人口が、世界で最も少ない国、「犯罪の少ない国」「安全な国」のひとつとされている。しかし他方で、「国に対する信頼感」は必ずしも高いとは言えず、「社会に対する不安感」は増す一方である。

近年、犯罪の抑止や再犯の予防は、国だけでなく、地方自治体の課題として広く社会に共有されつつある。2016年に制定された『再犯の防止等の推進に関する法律(再犯防止推進法)』は、中央政府の再犯防止に関する調査研究だけでなく地方政府にも再犯防止等推進計画の策定を義務付けている(非集権化)。 いまや、犯罪や非行の問題は、司法や法務のレベルのみにとどまらず、福祉や医療、保育や教育、コミュニティー(まちづくり)の領域にまで広がっている。
かつて、ドイツの近代刑事政策学の創始者フランツ・フォン・リスト(Franz Eduard von Liszt 1851 - 1919)は、「最良の社会政策こそが、最善の刑事政策である」と言った。犯罪学の知見は、治安対策・社会防衛という枠組みから、より広く社会福祉・地域創生の基盤に資するものと位置づけられようとしている。

【新しい犯罪学のキーコンセプト:
“つまずき”からの“立ち直り”】

わたしたちは、現代の多様な逸脱的現象を捉えるため、従来の犯罪行為と非行行動にとどまらず、その前兆的逸脱行為を含めた幅広い、多様な“つまずき(Deviance)”を研究の対象とすることを提案する。そして、これまでの調査研究を通じて、「“つまずき”の背景には人間の“孤立”がある」との結論に到達した。人びとが孤立から立ち上がり、“つまずき”を克服するためには、当事者の主体性を回復することが必要である。わたしたちは、この回復へのプロセスを “立ち直り(Desistance)”と定義している。

新しい犯罪学の視点では、犯罪の予防の機能は、意識的か、無意識的かは別として、わたしたちの日常的活動の中でも働いている。“立ち直り”は、当事者の個人的努力だけでは実現できない。家族や隣人、地域社会の構成員や公的機関の職員、さらには、専門家や研究者が共に取り組まなければ実現できない課題である。つまり、新しい犯罪学は、多様なコミュニティーの再生と活性化に深く関わっているのだ。したがって、人びとの成長過程にある保育や子育て、教育や福祉、老いと生きがいなどにおいても、犯罪学の知見を活用することによる効果が期待される。

新しい犯罪学のキーコンセプト:“つまずき”からの“立ち直り”

【新しい犯罪学の目標と期待される人間像】 

龍谷大学の母体である浄土真宗本願寺派の精神と伝統に根ざし、誰もが人生で体験する“つまずき”からの“立ち直り“をテーマに、対人支援を基軸とした科学的証拠に基づいた実践のあり方について研究する学融領域「犯罪学」の構築が目標となる。問題に取り組む際の基本理念は、「人にやさしい犯罪学」、「生きづらさを抱えている人に柔軟に対応できる力を持った人と地域の創生」である。その実現にためには、学際・学融的視野を持った担い手が必要となる。

【まなびのポイント】

まなびのポイント

犯罪学研究センターの作成する犯罪学カリキュラムは、教養教育においては人間科学・社会科学・自然科学の3つ科学的視点を基盤とし、問題解決型思考を重視する。社会科学的思考、法律学的思考、リサーチ・メソッド(社会調査力)およびイングリッシュ・リテラシー(英語運用力)などが挙げられる。専門教育においては「SDGs(Sustainable Development Goals)持続可能な開発目標」の実現と地域福祉の向上を目指すグローカルな視点に基づき、伝統的な法学・心理学・社会学にとどまらず、宗教学・福祉学などの幅広い知見も獲得するため多様な科目を配置する。

さらに、対人的コミュニュケーションと問題解決の能力を育成するため、ケース・スタディー、エクスターンシップ、カウンセリング、ファシリテーションなど、現場での体験を重視した教育メソッドを活用する。

ウィズ&ポスト・コロナの環境における新たな学習ツールであるICT(Information and Communication Technology)を活用して、効率的かつ効果的な学習を実現するとともに、対人接触(tangible)な学習機会を重視する新たな学習環境を構築する。