レビューが答えようとする,きちんと整理された問いは,これまでに積み重ねられてきた知識を踏まえて生まれてくる。プロトコルの「背景」の章では,この背景知識に焦点が当てられる。この章は,レビューを行う必要性を概説し,レビューの答えようとする問いがなぜ重要かを説明する。
「背景」の章は,この後に続く,実証的な結果のための舞台設定である。この章は,レビューの答えようという問いについての概念的議論と,問題の重要性についての説明を含まなければならない。レビューワは,レビューの答えようとするリサーチ・クエッションについて,その理論的,実務的,方法論的経緯を含めた,簡単な概観を行うことが求められる。本章では,リサーチ・クエッションを取り巻く,質的・歴史的論争についても注意を払う必要がある。レビューワは次の問いに答えなければならない。
本章は,このトピックに関し行われた過去のレビューについても論じなければならない。過去のレビューをレビューすることによって,過去のレビューから何が学べるかを強調し,同時に,過去のレビューの矛盾点と手法の長所と短所について指摘しなければならない。未解決の実証的問いと論争点をはっきりと述べることで,新たなレビューがもたらすであろう貢献が明確となる。
つまり,「背景」の章では,リサーチ・クエッションを取り巻く理論的,概念的,実務的論点に関し,全般的な説明を行わなければならない。本章は,過去のレビュー,過去のレビューが作り出した/解決できないままに放置した論争点,新たなレビューがそのうちどれに答えようとするかを,まとめて記述しなければならない。
系統的レビューを行う理由には,さまざまなものがある。たとえば,(a)個々の研究の結果を統合することにより関係や処遇効果について一般的な結論を述べる, (b) エビデンス間の矛盾について理由を探る, (c) 個別の研究では答えることができないような問いを研究間のばらつきを用いて答える,(d) 実務のばらつきについて説明する,(e) 介入の主観的経験に関するエビデンスをレビューする,(f) 関連する分野の研究をつなぎ合わせる,といったものである。キャンベルレビューは,ここに掲げた理由を含むあらゆる理由に基づいて実施することができるが,全体的な目的は,実証的研究を集め要約し統合することで,エビデンスを人々に理解してもらうことにある。
目的を述べるに当たり,レビューワは,キャンベルレビューは人々に社会・行動介入や政策を決定にするに当たり実際的な判断をしてもらうために役立たつものでなければならないことを念頭に置く必要がある。このことは,キャンベルレビューを行うか否か,どのように行うか,レビューが答えるべき問いをどのように設定するか,どのようにプロトコルを作るか,レビューの結果をどのように示すかといった決定に対して,重要な意味を持っている。
レビューの目的は,ある政策や実務を採用する際に人々が直面する選択(実際の選択肢)を検討することである。レビューは,政策決定を行う人々にとって有用なアウトカムを検討しなければならない。